酪農家にとって冬の外作業は過酷であり、その寒さゆえに怪我や事故を起こしやすいとされています。私の住む須塩原市も早朝や夕方から夜にかけては、冬の間は氷点下を下回ることも多く、その時間帯に外作業をする酪農家にとって寒さ対策は必要不可欠です。
寒さ対策については、農家自身も行っているが、寒かったら厚着をすれば良いなど、本人の主観的判断に基づく対策がとられていることが多いです。
実は身体の内部の温度が低下すると、警戒心や論理的思考など作業効率を悪くしたり事故を招くとされており、酪農経営にとって大きな障害になる可能があります。
今回は理学療法士、衛生管理者の視点から見た、酪農経営を守るための防寒着の選び方と効率よく手足を温めることができる準備運動の方法をお伝えします。
寒冷地の作業で起こる体の影響
寒冷地では自律神経反射により皮膚の血管が収縮します。その結果、暖かい血液が身体中心部に集まり、深部体温が保持されます。しかし身体表面部の血流が減少して皮膚温が低下します。
人間は、生命維持活動のために心臓から遠い手足の血流を体の内部に集中させるような働きがあります。心臓から遠い手足は血流が制限されやすいため、防寒服を着用しても、手足の防寒対策には充分とは言えません。
末梢部が冷える事によってその近くの組織の温度、血流量が減少し、感覚神経や運動神経の電動時間が遅延し、結果的に筋力低下を起こします。
手先、足先の筋力低下は、搾乳などの作業効率の低下や、濡れた牛舎内で転倒リスクを高めやすくなるため、安全な酪農経営のためには対策が必要です。
農作業に合わせた防寒着の選び方
前述したように手先足先は体の中心に比べて体温が下がりやすい場所である。
保温のためには防寒着の工夫も必要です。
単に分厚い防寒着では、しゃがみ込みや搾乳機をつけるなど、ダイナミックな動きから細かい作業の阻害因子になります。
保温効果を下げず、各関節が動きやすいものを選ぶことがオススメです。
作業着の選び方
作業着はベースレイヤー(肌着)、ミドルレイヤー(中間着)、アウトレイヤー(防寒着)で構成される3レイヤー(重ね着)がおススメです!
ベースレイヤー (肌着)
役割: 汗を素早く吸収・拡散し、肌をドライに保つ(汗冷え防止)。
素材: メリノウール+合成繊維(ポリエステルなど)が1番バランスがいい!
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メリノウール+合成繊維は価格がおススメですが値段が高くなりやすいです。
メリノウールは保温性が高く、合成繊維は速乾性が高い素材です。
一方を重視するように選ぶと、もっと価格を抑えられるので選ぶ基準にしてください!
ミドルレイヤー (中間着)
役割: 体温を逃さず、ベースレイヤーからの水分を外に逃がす。
素材: フリース、防風性のあるニット、電熱ベストなど
保温性はやや低いが、価格、動きやすさ、重ね着のしやすさで見たおススメはこれ!
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アウターレイヤー (防寒着)
役割: 風や雨、雪から体を守る。内側の湿気を逃す透湿性が必要。
素材: 防水・防風・透湿性素材(ゴアテックス等)。
価格、透湿性、重ね着のしやすさ、動きやすさからみておススメはこれ!
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動き始めは寒いですが、途中から体が温まり大量の汗をかきます。
防寒着の下に着るインナーは、汗を吸いやすく、乾きやすい素材のものを選ぶと良いです。
また冬でもインナーの着替えを用意していくことがお勧めです。
手袋の選び方
防水性、保温性、グリップ力、手入れのしやすさが重要です。
手先の循環を保つことは作業効率を高めます。
作業内容を考えると、防水性、保温性、手指の動かしやすさは絶対に必要です。
しかし、牛の乳房炎などの感染症を考えると、すぐに洗えて衛生管理しやすい事も重要な要素です。作業効率の良さ、牛の感染予防を考慮したものを選ぶことがおススメです。
保温性、手指の動かしやすさ、防水性で選ぶならおススメはこれ!
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手袋は一着ではなく、用途に合わせて付け替えたり、洗い替えできるように複数持っておくことがおススメです!
靴下の選び方
足は心臓から一番遠く、血流が悪くなりやすい場所です。
そのため自分で管理しにくく、意識的に道具を選ぶ必要があります。
靴下はとても重要で、保温性、速乾性、動かしやすさ、踏ん張りやすさが大切です。
指が一体型のものは保温性が高いとされています。
5本指のものは足趾が独立して動かせるため、足の踏ん張りがききやすい特徴があります。
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実際の酪農家・農家さんと共同開発したものなので、農作業に適した靴下です!
5本指のものあるため、足趾の踏ん張りやすさ、転びにくさを重要視する人にもおススメです!
理学療法士おススメ3分間のウォーミングアップ方法
寒い時に手のひらに息をかけたり、指をグー、パーしたりするのは効果が薄く持続性が低いです。理由としては、体の表面だけが温まったり、小さな関節だけを動かしているからです。
手先や足先の血流は、心臓から送り出された血液が動脈を通って循環することで保たれています。
動脈は、体の中心に近いほうが大きく太くなっています。からだを温めるためには、血流を良くすることが重要で、効率よく手先、足先を温めるには、肩や股関節など大きな関節を動かす事がおススメです!

画像出典:Servier Medical Art(CC BY 4.0) https://smart.servier.com/
手指の血流を良くする運動
腕全体の血流の大元は、鎖骨下動脈と呼ばれる動脈です。
鎖骨のすぐ下を通るため、鎖骨を動かすことで血流改善が望めます。

画像出典:Servier Medical Art(CC BY 4.0)一部改変 https://smart.servier.com/
鎖骨は肩甲骨と靭帯で連結しているため、肩甲骨を大きく動かすと鎖骨が動きます。
鎖骨は腕を下げた状態では運動量は小さいため、動かす際は肘を肩の高さ以上に動かすことが重要です!
肩甲骨回し運動 前回し 後ろ回し 各20秒ずつ

- 胸を張り、肘を曲げて、鎖骨のところに指先を置く ※鎖骨の動きを確認しやすい
- 肘で大きく円を描くように肩甲骨を回す
- 肘が肩より下にある時は、肩甲骨を寄せるイメージ
- 肘が自分の前にある時は、肩甲骨を開くイメージ
- 肘を肩の高さ(写真右の点線)よりも上げるイメージ
- 肩や首を痛めている場合は、できる範囲で行う
足先の血流を良くする運動
足全体の血流の大元は、太ももの内側を通る大腿動脈と呼ばれる動脈です。
大腿動脈は内側を通る筋肉(縫工筋、長内転筋など)の近くを通るため、内側を伸ばすように足を外に開くことが重要です。

画像出典:Servier Medical Art(CC BY 4.0)一部改変 https://smart.servier.com/
股関節回し 外回し 左右20秒ずつ 内回し 左右20秒ずつ

- 手すりなど動かないものにつかまりながら行う
- 片足を上げて、膝で大きく円を描くように動かす ※足はなるべく開く
- 立っている足と体の中心が真っすぐになるように行う
- 股関節や膝を痛めている場合は、痛みの無い範囲で行う
踵上げ 20回

- 手すりなど動かないものにつかまりながら行う
- 膝を伸ばして足の親指で地面を踏むように行う
- 伸びあがる方向は前ではなかく上方向を意識して行う
- 下す時はゆっくり
全身の血流を良くする運動
手先、足先を温めた後に、仕上げの全身運動を行うとより効果的です。
息を止めずに行う、有酸素運動も血流を良くする報告があるため、自分のぺースで行いましょう!
その場で素早く足踏み 30秒

- 手すりなど動かないものにつかまりながら行う
- 一定のリズムでなるべく早くその場で足踏み
- 踵を着かないように行う
- 足場が平らで、滑りにくいところで行う
- 心臓や呼吸器など内科疾患がある方は、無理に行わない。
まとめ
冬の酪農作業における寒さは、単なる不快感ではなく、事故や作業効率低下につながるリスク要因です。
特に手先・足先の冷えは、筋力低下や感覚鈍麻を引き起こし、転倒や搾乳作業のミスを招きやすくなります。
理学療法士・衛生管理者の視点から見ると、
「寒かったら厚着をする」という感覚的な対策だけでは不十分で、身体の仕組みに基づいた対策が必要です。
今回お伝えしたポイントは大きく3つです。
- 防寒着は3レイヤーで考える
動きやすさと保温性、汗冷え防止を両立することで、長時間の作業でも体温を安定させられます。 - 手袋・靴下は“末梢の血流”を意識して選ぶ
防寒性能だけでなく、動かしやすさ・滑りにくさ・衛生管理のしやすさが、安全な作業につながります。 - 作業前3分のウォーミングアップが事故予防になる
肩や股関節など大きな関節を動かすことで、効率よく手先・足先まで血流を届けられます。
寒さ対策は「個人の我慢」ではなく、経営を守るための安全管理・労働環境整備の一部です。
今日からできる小さな工夫が、ケガや事故を防ぎ、作業効率を高め、結果的に酪農経営を安定させることにつながります。
ぜひ、ご自身の作業環境や服装を一度見直し、安全に、長く働ける準備を始めてみてください。
参考文献
筋血流量と理学療法 ストレッチングや筋収縮,マッサージの影響:大和洋輔,理学療法ジャーナル,2025
暑熱、寒冷環境下での作業に伴う健康リスクと予防方策:澤田晋一,安全工学,2011
寒冷環境下での作業に伴う健康リスクと予防方策:労働安全衛生研究所,https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/mail_mag/2011/34-3-4.html
片足膝窩部への湿熱加温が下肢温度と血流に及ぼす効果:松田真紀 他,愛媛大学看護研究雑誌,2019


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