理学療法士・衛生管理者が監修!酪農経営を長く続けるための長靴の選び方

酪農

どの業種も、プロは道具へのこだわりを持っていることが多いです。
道具は仕事を助けるパートナーと行っても過言ではありません!
特に足元を支える靴は、体の専門家から見て、腰痛、膝痛を防ぐために重要です。

何時間も外で作業する酪農家にとっては、長靴の存在は大きいと思えます。
しかし長靴へのこだわりは少なく、価格のみで選んでいる人も少なくはない。
実は長靴の性能によって足の疲労感、バランス能力が変わり、仕事のしやすさが変わります。
長靴選びは、長さ、色、ソールの硬さ、ヒールカウンターの有無、手入れのしやすさが重要です!

今回は酪農経営を長く続けるための長靴の選び方を理学療法士、衛生管理者の視点からお伝えします。

酪農家にとっての長靴の役割

長靴はスニーカーと比較して軽さ、動きやすさ、疲れにくさなど身体機能の観点からみると、劣っていることが多いです。

しかし、衛生管理者の観点から見ると、酪農家にとってメリットが大きいです。
その理由は…

  • 水や糞尿で汚れない
  • 滑りにくくて安全
  • 洗えて衛生的

つまり、汚れやすい牛舎でも安全・清潔に作業できる必需品と言えます!
安全衛生の面に加えて、身体機能面の視点が加わると、体に負担をかけにくい長靴を選ぶことができると思います。

足趾の機能

足趾の重要性

立って作業する場合は、実は足の指がとても重要です。
転倒歴または転倒しそうになった経験がある人と転倒歴のない人の足指押力(足の指で地面を押す力)を比較して研究では、転倒歴のない人は、足指押力が強く、最大値に到達するまでの時間が速いとされています。
加えて、力を入れたり、抜いたりが滑らかに可能で、転びやすい人は、足の指を滑らかに動かすことが難しいと報告されています。

また、浮き指の人(地面に足の指が着いていない足の形)と指が地面についている人のバランス能力を比べると、浮き趾の人は動的バランス能力が低下するとされています。

つまり、足指をうまく使えると、作業時に転びにくく、足が疲れにくい可能性があります。
酪農家の作業現場は、濡れてすべりやすい牛舎や、ぬかるんだ地面を歩く機会が多いです。
転倒予防や足の疲労の対策として足の指を効率よく使える運動や、環境が必要不可欠だと思います。

長靴の特徴と疲労の関係

ゴムの長靴はスニーカーと比べ、

・足首が安定しにくい
・足が靴の中で滑る

という特徴があります。
さらに脱ぎ履きのしやすさを重視し、大きめのサイズを選ぶ人もいます。

長靴の中で固定性が低いと、足趾で踏ん張ろうとするため、足の疲労が蓄積しやすいです。
足の固定性の低い靴は、靴の中で安定性を求めて足趾が開き気味になり、靴が脱げないように足趾上を向く習慣がつき、浮き指になりやすいとされています。
前述したように、浮き指はバランス力の低下や足の疲労の原因になるため、適切な長靴を選んだり、足の機能を効率よく使える工夫が必要です。

疲れにくい長靴の選び方

丈の長さ

長靴の長さによる疲労感、バランス能力を見た研究では、長靴を履いて歩行することで、下肢に筋疲労が生じ、バランス能力が低下するとされています。
特に長靴の長さが短い長靴(筒丈17㎝)では、疲労した後のバランス能力が低下しやすく、不安定性が大きいとされています。
反対に長靴の長さが長いもの(筒丈40㎝)の方は、足が疲れているときによく制御がかかり、バランスを保ちやすいとされています。

つまり、長靴を履いての労働時間が長い酪農家にとっては、足首の柔軟性が高すぎる筒丈の短い長靴より、筒丈の長い長靴を選ぶことが推奨されています。

かかとの固定性

靴のかかとの高さによるバランス機能を見た研究では、ヒールが高い靴はバランス能力を有意に低下させるとされています。
また高いヒールカウンターのある靴はバランスに対して有益であるとされています。
かかとが高すぎず、長靴にきちんとヒールカウンターの入ったものを選ぶことが重要です。

長靴の色

黒色ゴムの長靴は採用されていることが多いが、低温熱傷の可能性があるとされている。
ある例では、低温熱症により難治性の皮膚潰瘍に至った例もある。

黒色ゴムの長靴を外気温35℃の環境に約30分間放置している実験では、長靴の内部の温度は50℃から55℃。密閉型の長靴では60℃以上に達するとされています。
さらに瞬間的ではなく、その温度が約4時間持続すると言うデータがあります。

夏場での作業は、35度を超える猛暑日があるため、黒色の長靴ではなく、白色の長靴を選ぶ方が、熱中症や低温やけどのリスクを減らすことができます。

靴底の硬さ

牛舎は床がコンクリートで濡れている事が多く、足にかかる負担の軽減のためやや硬めの靴底が推奨されています。
しかし硬すぎると足の機能を上手く使いにくくなため、適度に硬く、足のMP関節(足指の付け根の関節)部分に適度な柔軟性があるものがおススメです!

店頭で購入する場合は、お店の人に了承を得てから、つま先を地面につけた際に、足指の付け根が曲がりやすいかを確認してみてください。

手入れのしやすさ

靴底の牛の糞や、泥が付着することが多いです。
特に牛糞にはサルモネラ菌などの感染症をおこしやすく、そのまま歩き回ることは衛生管理の観点から良くはありません。
靴底に泥や牛糞が付着しにくい素材、水洗い糞や泥が落ちやすいものがおススメです。

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・酪農家の定番で、踵のホールド力が最も安定している
・足場の悪い牛舎向けで滑りにくい構造
・ソールも硬めでブレにくい
・靴底の泥や糞などを洗い落としやすい
・耐久性が高く長持ちしやすい

デメリット
・軽作業用のものと比較するとやや重い
・冬場では表面が硬くなりやすく、履き心地が低下する場合がある
・安価なもと比較すると値段もやや高い

※重作業の場合は、先芯の入っている、ハイブリーダー HB-500がおススメ!

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メリット
・軽くて履き心地が良いため、牧草の刈り入れなどの長時間の作業がしやすい
・柔らか素材のため、しゃがんだりなどの動作がしやすい
・靴底の泥が落としやすい素材

デメリット
・柔らかい素材なので、ハードな使い方だと消耗は早め
・ゴム製の長靴と比べて防水性が低め
・安価のものと比較してやや値段が高め

※上記は実際に使用したものではなく、酪農作業の条件(防水・防寒・立ち作業)から見て
「向いている特徴」を持つものを紹介しています。
個人差があるため、好みに合わせて試してみてください!

長靴のサポート品

インソール

足のフィット感を高めたり、クッション性を向上のためにインソールを入れるのもおススメです。
実際に見学した酪農家さんもインソールを入れてから、腰痛、膝痛が楽になったという声もありました。
選ぶコツとしては、
・足のアーチ(内側アーチ、外側アーチ、横アーチ)をサポートしてくれるもの
・通気性が良くムレにくいもの
・クッション性のあるもの

インソールを挿入する際は、長靴のサイズを0.5~1㎝大きめのものを選んでください!

5本指の靴下

通常の靴下は、足趾の自由度が少なく力を入れにくい場合があります。
それに比べ、5本指の靴下は、足趾の自由度が高く、力を発揮しやすい特徴があります。
実際にプロのスポーツ選手も、5本指の靴下を使用している人が多く、パフォーマンスの向上が期待できます。
体を常に動かす酪農家も農場のアスリートといっても過言ではないため、小さな道具にこだわることも大切です!

まとめ

酪農家にとって長靴は、毎日使う「消耗品」ではなく、
身体を支え、仕事の質と安全を守る大切なパートナーです。

価格や慣れだけで選ばれがちな長靴ですが、
実際には長靴の性能によって

  • 足の疲労感
  • バランス能力
  • 転倒リスク
  • 腰痛・膝痛の出やすさ

が大きく左右されます。

特に、筒丈の長さ・かかとの固定性・靴底の硬さと柔軟性・色・衛生性
といったポイントを意識することで、
牛舎という過酷な環境でも「疲れにくく・安全に」作業することが可能になります。

また、インソールや5本指ソックスなどの小さな工夫を取り入れることで、
足趾の機能を活かし、体への負担をさらに軽減することもできます。

酪農は短距離走ではなく、長く続ける仕事です。
だからこそ、日々の作業で最も体を支えている「足元」から見直すことが、
将来の腰痛・膝痛・離農リスクを減らす第一歩になります。

ぜひ一度、
「今履いている長靴は、自分の体を守ってくれているか?」
そんな視点で、足元をチェックしてみてください。

長靴を変えることは、
仕事のしやすさと、これからの酪農人生を変えることにつながります。

参考文献
炎天下での黒色ゴム長靴着用による低温熱傷から難治性皮膚潰瘍に至り,合併下肢閉塞性動脈疾患に対しての血管内治療が潰瘍治癒に有効であった1例:斧田尚樹 他,心臓 56,2024

成人における足趾接地の実態と浮き趾例の足趾機能:福山勝彦 他,理学療法化学 24,2009

Effects of Footwear Features on Balance and Stepping in Older People:Jasmine C. Menant 他,Gerontology,2008

The effects of the length of rain boots on balance during treadmill walking:Hee Ra Yang 他,J Phys Ther Sci,2015

浮き趾と足趾機能ならびい静的・動的バランスとの関係:村田伸 他,Japanese Journal of Health Promotion and Physical Therapy,2017

高齢者の転倒と足趾機能との関係:真島翔平 他,理学療法さが,2017


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